根子集落へようこそ!

1975年(昭和50年)3月開通。延長575.8mの一車線トンネルです。ちまたでは、「暗くて狭い」と、もっぱらの噂ですが、このトンネルが開通する以前、町へ出るためにはこのトンネルの上にある山を越えていました。
開通以前にも車の通行可能な道路(旧道)はありましたが、徒歩では笑内駅、萱草駅共に便が悪く、当時は車の所有は少なかったため、町へ出るためには峠越えは必須でした。豪雪の当地、冬の峠越えは辛い日常でした。

たしかに、このトンネルは狭い。でも、峠越えの労力軽減と考えれば、人が通るには十分過ぎる広さであり、「ついでだから車も通れるようにしておけば後々便利かも?」程度のコンセプトだったのでしょう??。
当時は、列車利用の通勤通学のため、多くの人達がこのトンネルを徒歩で抜けていましたが、現在では通学はスクールバス、通勤は車でと、歩く人は少なくなってしまいました。
車のためにはもう少し幅員が広い方が良かったのかもしれませんが、当時、これだけの自家用車保有数が増えるとは想像できなかったのでしょう。今時、田舎で暮らそうと思ったら車は必須ですから。
そして、このトンネルは暗い。国道辺りのトンネル照明は明るいし、それに比べたら各段に落ちます。でも、夜の集落をご存じないでしょう?街灯がポツリ、ポツリ・・・。夜道を歩くのには懐中電灯が必要な集落なのです。それに比べたら、十数メートル置きに照明があるトンネルの明るさといったら。まぁ、比較の問題ですね。 ^ ^;

戸数100戸足らずの小さな集落のために巨額な予算を投じる、昨今では考えられない政策ですが、このトンネルがなかったら、今でも峠越えだったら、これほど注目を浴びることはなかったでしょう。峠が住民以外の往来を阻み、今でも「隠れ里」のまま孤立した集落であったかもしれません。ましてや、不便さ故に集落が消滅していた可能性すらありました。

 

国道105号線笑内付近の交差点。阿仁合方面から進行方向が比立内、左が笑内駅&笑内集落。右折すると根子集落になります。

入り口には看板がありますが、国道に横向きで設置されているので、車からは視認しにくいです。
あとは坂道をひたすら登る。トンネル入り口まで、徒歩で7〜8分程度。

笑内側の坑口です。
両側もコンクリートでガッチリ固めて頑丈だったのですが、まさか上の山が崩れるとは・・・。現在は防護対策済です。

 

銘板
塗装は剥がれていますが、鋳鉄製なので文字を読むのには問題ありません。まぁ、40年経っていますしね。
今日まで気が付きませんでした。この道路は林道ではなく「農道」だったんですね。現在は市道だったような??

扁額
下に小さく「小畑勇二郎」のプレートがあります。当時の秋田県知事で、この事業を強く推してくださった方です。この扁額の題字も知事の筆によるものです。
鉄骨に注目、誰がぶつけたんでしょう?

入り口の標識(かなり傷んでいます)
串団子のような標識は、待避所の案内標識なのですが、このトンネル以外には無いらしく、珍品らしいです。標識の意味は、「この先2箇所の待避所あり」。下の補助標識は、次の退避場所までの距離(175m)です。

 

トンネル断面と普通車(小型)との比較です。車のすれ違いが無理だとお分かりでしょう?
左の標識、3連だったのに2段目がなくなっています。本来は幅制限で4mの標識だったのですが、トンネル幅員4.05mなのに・・・余裕5cm ゛(ノ><)ノヒィィ

トンネル進入直後です。
直線のトンネルですが、排水のため緩い縦断勾配を設置しています。トンネルの両端から緩い上りで中央付近が最も高くなっているため、向こうの明かり(出口)は見えません。

数十メートル進んだ辺り。
写真というのはありがたい物で、露出を掛ければこんなにも明るく写ってしまいます。
前方に自然光の明かりが見えますが、まだ出口ではありません。外の明かりが天上に反射している光です。

 

笑内側の待避所です。ここだけ断面が大きくなっているので、車がすれ違うことができます。
夏のトンネル内はヒンヤリして気持ちよく、外気温との差で結露するため路面が濡れています。雨降り等、高温高湿度だと霧が発生する場合があり、視界が非常に悪くなる場合があります。

根子側の出口まで後数十メートル。
トンネル内には生活用のケーブルが敷設されています。左壁面には電話線、天上の右側は電線、左側はトンネル照明用のケーブルです。

根子側の出口付近です。
トンネル通過に徒歩で7分程度でしょうか?
見慣れている住民には、さほど珍しくもないのですが、ナトリウム照明のせいなのか、異空間のような感覚を覚えるらしいです。あと、車が通ると爆音です。(;^▽^A
どれだけデカイ車がやって来たのかと思ったら軽トラ・・・

 

根子側の坑口です。
扁額、銘板、標識共に笑内側と同じものです。標識はポールがポッキリ折れてしまい、撤去されていました。
トンネルの上には桜の木があり、殺風景な早春の山に彩りを添えてくれます。

トンネル出口右側(根子側からは左側)に、トンネル上に続く道を作ってありますので自由に登り展望をお楽しみ下さい。
そばにトンネルの記念碑があります。

注意看板が切れてしまいました。
滑りやすいので足下にご注意下さい。時折草刈りをしていますが、草ボウボウの時もありますのでご容赦下さい。(電線が横切っていますので写真撮影は若干難があります)

 

トンネルを出ると正面に見える石碑です。
これは番楽が国重要無形民族文化財に指定された記念碑です。
その横に、観光地でお馴染みの顔を出しての記念写真用看板?があります。恥ずかしいので私はやったことはありませんが、観光の笑い話にでも・・・ ^ ^

根子集落へようこそ!
集落に関することがらを、極々簡単に説明しています。

トンネルを抜け、この坂道を下ると集落に入ります。
坂道は笑内側に比べて距離は短いのですが、その分勾配はキツくなっています。冬場は除雪のせいで圧雪状態にもなり、滑るキツイの二重苦。でも峠越えに比べたらずいぶん楽になりました。

 

坂を下り終え交差点。左が集落へ、正面が「林道阿仁線」及び神社・小学校方面へ、右は旧道で現在は林道として使用されています。
正面にある看板は「林道阿仁線」のもので、集落唯一?の公的な看板です。
小さな看板は自治会で設置したもので、集落の要所に設置してありますので、道案内としてご利用下さい。

左写真の交差点を左折すると程なく集落の中心地?
昔は5軒の商店(食品・日用雑貨)がありましたが、最後に残った「西根商店」も店主の他界により、根子から商店が消滅してしまいました。
この交差点は変則十字路で、左は昔の峠へ向かう道、右正面は児童館・根烈岳方面、右は神社・旧小学校へ向かう道です。集落の真ん中ではありませんが、集落の主要な道が集まっている交差点です。

 

トンネルの完成を記念した石碑です。
上部に当時の秋田県知事「小畑勇二郎」氏の歌が、下部にはこの事業に尽力頂いた方々への謝辞が刻印されています。

番楽が国重要無形民族文化財に指定された記念碑です。
番楽の由来が簡単に説明され、上部には演目の「鞍馬」の一場面が刻印されています。また土台には主な公演歴のプレートが埋め込まれています。

おまけ
トンネル上部の桜です。さほど大きな木ではありませんが、色のない早春の山に咲きますので、集落からも目立つ花です。(2008/4/23撮影)

 

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